消費者裁判手続特例法について
 消費者裁判手続特例法が平成28年10月1日より施行されています。本制度は、日本版クラスアクションとも言われ、注目される制度です。

1 制定の経緯
 消費者と事業者の間には、情報の質・量や交渉力の格差により、消費者が自ら被害回復を図ることが困難な場合があり、結果として消費者が泣き寝入り状態に陥ってしまうことがありました(消費者被害を受けたものの、3割以上が誰にも相談せず泣き寝入りをしているとのデータもあります)。特に、個々の消費者をみれば被害額はそれほど大きくないことも多く、個々の被害者が裁判を起こした場合の訴訟費用や労力に見合わないこともその原因として指摘されていました。
 そこで、個々の消費者に代わって専門的知見や情報収集能力を有する消費者団体が事業者に対し訴訟を行うことを認め、消費者の財産的被害を集団的に回復することを目的としたものが本制度です。

2 本制度の特徴
 本制度の大きな特徴は、同種の被害が拡散的に多発するという消費者被害の特性から、消費者被害の集団的な回復を図るための「二段階型」の訴訟制度を採用していることです。
 すなわち、
①一段階目の手続では、内閣総理大臣の認定を受けた特定適格消費者団体が事業者を相手に、相当多数の消費者と事業者との共通義務の存否につき、確認の訴えを提起し(共通義務確認訴訟)、
②消費者側が勝訴した場合には、個々の消費者が二段階目の手続に参加し、簡易な手続によってそれぞれの消費者の債権の有無や金額(誰に、いくら支払うか)が迅速に決定されるというものです。
 このような二段階型の制度により、消費者の被害回復のための費用や労力を低減し、迅速かつ一体的に消費者被害に関する紛争を解決できることになります。

3 対象となる請求・事案
(1)本制度の対象となる請求は、事業者が消費者に対して負う金銭の支払義務であって、消費者契約に関する以下の請求です。
 ①契約上の債務の履行の請求
  例)ゴルフ会員権の預り金の返還請求に関する事案
 ②不当利得に係る請求
  例)学納付金返還請求に関する事案、語学学校の受講契約を解約した際の清算に関する事案、布団のモニター商法に関する事案
 ③契約上の債務の不履行による損害賠償の請求、瑕疵担保責任に基づく損害賠償の請求
  例)マンションの耐震基準に関する事案
 ④不法行為に基づく民法の規定による損害賠償の請求
  例)未公開株取引の事案、金地金の現物まがい商法の事案
(2)一方、消費者契約の目的となるもの以外の財産が滅失・損傷した場合などのいわゆる拡大損害、消費者契約の目的物の提供があれば得るはずであった利益を喪失した逸失利益、人の生命・身体を害されたことによる人身損害、精神上の苦痛をうけたことによる慰謝料は、本制度の対象とはなりません。したがって、このような損害の賠償や利益を請求したい場合には、個々の消費者が個別に訴訟を提起せざるをえないことになります。

4 コメント
 これまでも適格消費者団体は差止請求を行うことができましたが、本制度は消費者団体の権限をさらに拡大強化するものといえます。被害額がそれほど大きくはなく、訴訟との費用対効果等から、これまで泣き寝入りをせざるをえなかった消費者でも、被害救済が受けられる可能性が高まり、より一層消費者保護が図られることが期待されます。
 一方、事業者としては、今後、より一層コンプライアンスを高め、そのようなリスクにも十分に配慮した対応をとることが求められるといえるでしょう。