取締役の選任・重任登記申請の懈怠について

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Q1、先日、自分の経営する会社の登記簿(現在事項証明書)をとったところ、自分の取締役選任登記が3年前になされている状態でしたが、問題がありますか。
A1、

会社法上、会社の登記事項に変更が生じた場合、2週間以内に変更登記を申請しなければならないと定められています(会社法第915条1項)。株主総会で新たに取締役に就任した、あるいは取締役の任期満了後に再任された(これを「重任」といいます)ケースですと、その取締役が就任あるいは重任をした日から起算して2週間以内に登記申請しなければなりません。

 
Q2、自分の経営する会社では、株主総会を開催した記憶がなく、決算の際に税理士さんに必要だと言われ議事録は作成しているのですが。
A2、

おやおや、株主総会は毎事業年度の終了後一定の時期に招集しなければならないとされ(会社法第296条1項)、招集漏れは代表者個人に対して100万円以下の過料の制裁(会社法第976条18号)を受けるほか、総会決議不存在や決議無効等の様々なトラブルの元になります。


Q3、取締役の任期は何年でしょうか。
A3、

取締役の任期は、選任後2年以内に終了する事業年度のうち最後のものに関する定時株主総会の終了の時までとされ、ただし非公開会社(全部の株式について譲渡制限が設けられている株式会社のことを言います)では定款で選任後10年以内とすることも可能とされています(会社法第332条1項、2項)。

あなたの会社の定款をチェックしてみてください。


Q4、もし任期が2年とされていれば、株主総会を開催して再任決議を取り、重任登記をすればよいのですか。
A4、

1年を経過して登記申請を行ったとしても、登記自体は受理されることとなります(2週間が経過してしまったことを理由として却下されることはありません)。

しかし、この2週間の期限をやぶって登記申請をすると、代表者個人に対して100万円以下の過料の制裁を受ける可能性が出てきます(会社法976条1号)。


Q5、過料100万円は高すぎると思います、また過料の制裁はいつ頃になりますか
A5、

過料の金額は、裁判所が100万円以下の範囲で決めることとなりますが、実際のところ100万円満額の過料の制裁というのはなく、数万円から10万円の範囲の制裁が多いように報告されています。
 また、過料の制裁は、登記申請によって登記懈怠を知った登記官から裁判所に通知が行き、その後に裁判所から会社代表者宛に通知として送られてきます。このように、法務局から裁判所を一旦経由して事件としての取り扱いがなされてから送られてくるため、ある程度の時間(数ヶ月くらい)が経過してから通知が届くこととなります。

Q6、非公開会社では取締の任期が最長10年まで伸長できるようになったとのことですので、定款変更をした方が良いのですか。
A6
株主総会の開催や、登記申請の手間を省けるという意味ではメリットが大きいと思われます。改正会社法の施行は平成18年でしたから、それ以降に設立された会社は設立時から役員の任期を10年としていることが多いかと思われます。もっとも、平成18年以降の新規会社は一度も役員変更登記をしないまま10年が経過することとなるため役員変更をしなければならないこと自体理解していない(忘れている)ケースが大半で、過料の制裁が多発することが懸念されています。


Q7、代表者への過料の制裁は前科となりますか。
A7、

過料は、国または地方公共団体が行政上の軽い禁令を犯した者に科する制裁のための金銭罰のことを言い「あやまち料」とも呼ばれています。過料は行政上の罰則であるので「罰金」と異なり前科にはなりません