事業用定期借地権について

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Q1、事業用定期借地権の制度が設けられた趣旨はどこにあるのですか。
A1、

近時、借地関係は多様化しており、コンビニ、郊外レストラン、ゲームセンターなど顧客のニーズに応える必要性から店舗立地の回転を速めており、従前の長期の借地関係を必要としない場合が多くなっていました。

そこで、長期の存続期間を必要としない借地人に対し、高額な権利金の負担なしに土地を借りることができるメリットを与え、一方、建物投資の必要がなく短期間なら土地を貸してもよいとの土地所有者の要望に応えるため、平成4年の借地借家法改正に伴い事業用定期借地権制度が創設されたのです。


Q2、事業用定期借地権の特徴はどこにありますか。
A2、大きく分けて4つあります。

(1)もっぱら事業の用に供する建物の所有を目的とした借地権です。従って、居住の用に供するものは除かれます。

(2)存続期間は、当初の立法は10年以上20年未満でしたが、事業者にとって柔軟性に欠けているとの批判があったことから、平成201月より10年以上50年未満に改められました。

(3)期間満了後の更新はありません(ただし、A4にて述べるとおり、長期タイプは特約による)。

(4)期間満了時に土地所有者が地上建物を買い取る必要はありません(ただし、A4にて述べるとおり、長期タイプは特約による)。

(5)事業用定期借地権の設定は公正証書によらなければなりません。

 

Q3、存続期間の改正についてもう少し詳しく教えてください。

A3、

10年以上20年未満ですと、建物の税法上の償却期間は多くの場合20年を超える期間に設定されているので、建物を取り壊すときに会計上の除去損を計上しなければならず、企業にとっては大きな障害でした。また、鉄筋コンクリート造りや中層の建物を建設しにくいため、倉庫や事務所目的の事業には使い勝手が悪いと言われていました。土地所有者としても20年以上の貸し出しが出来ず、収益性の面で欠ける借地権とも言われていました。 

そこで存続期間について、①30年以上50年未満の長期タイプと、②10年以上30年未満の短期タイプに分けた制度設計がなされたのです。

 

Q4、長期タイプと短期タイプは期間が異なるだけですか。

A4、

長期タイプは、「契約の更新及び建物の築造による存続期間の延長がなく、並びに第13条の規定による買取りの請求をしないこととする旨を定めることができる」(借地借家法23条1項)として、更新しないなどの特約を設けるかどうかを当事者間の合意に任せました(ただし、更新しない特約がないからといって50年以上の期間とすることは出来ません)。

 

Q5、では、事業用定期借地権の期間の延長は認められますか。

A5、

例えば、存続期間が40年の事業用定期借地権において、終了前に期間を5年延長することは許されます。しかし、合計期間が50以上となるような延長は許されません。当事者が事業用定期借地権の要件を逸脱することを承知で、あえて50以上となるような延長を行った場合、普通借地として扱われることになります。

 

Q6、当事者間で当初の契約終了後、再度、事業用借地権を設定することは出来ますか。

A6、

可能です。従って、契約書の中に当事者の合意により再契約ができる旨を定めることもできます。ただし、この再契約は別の事業用借地権の設定ですから公正証書によるなど、法律上の要件を備えなければなりません。