コーポレートガバナンスについて

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Q1.最近「ガバナンス」という言葉が使われますが、どういう意味ですか。
A1.
 「ガバナンス」とは、「コーポレートガバナンス」(「企業統治」)の略語で、株式会社における社外取締役・社外監査役の選任、委員会の設置、取締役と執行役の分離などをすることをいい、会社の経営陣を監視し統治するために必要な仕組みをいいます。


Q2.どうしてコーポレートガバナンスが問題にされるようになったのですか。
A2.
 そもそも日本では、会社は「株主のもの」という認識が弱く、株主の権利を代表するはずの取締役会と経営陣が一緒で、また社外機関による経営陣への監視は意識されないのが一般でした。平成に入ってから企業の不祥事が相次ぎ、企業の不祥事の防止と長期的な企業価値の向上を目的とし、株主や利害関係者(ステークホルダーと呼ばれ、取引先や従業員を含みます)の利益を守るため、「誰が」「どのように」「企業を統治するか」という観点でコーポレートガバナンスという概念が注目されるようになったのです。


Q3.日本の企業不祥事にはどのようなものがあったのでしょうか。
A3.
 有名なところでは、オリンパス社の粉飾決算事件、タカタのエア・バッグの不具合、東芝の長期にわたる不正会計、三菱自動車のカタログ燃費の詐称・不正計測等々、大企業による不祥事ないし企業犯罪が相次いで生起するにいたっています。また、日産自動車のゴーン元会長の役員報酬事件が記憶に新しいところです。


Q4.上場企業に適用される「コーポレートガバナンス・コード」とは何ですか。
A4.
 上場企業には「コーポレートガバナンス・コード」が適用されます。これは、利害関係者(ステークホルダー)による企業に対する統治・監視を行うためのルールをまとめたもので、2015年に、東京証券取引所と金融庁が中心となって策定しました。
 5つの基本原則、30個の原則、38個の補充原則、計73原則によって構成されます。これを基準に行動するので、上場企業にはかなり厳しいコーポレートガバナンスが適用されます。


Q5.中小企業でもコーポレートガバナンスは意識する必要があるのでしょうか。
A5.
 非上場の中小企業の場合、経営者=株主(オーナー社長のケース)や株主が経営者の一族などである場合が多く、証券取引所による監視も及びません。ただし、一族以外の少数株主がいる場合もありますし、ファミリー企業であったとしても、不祥事を防いで社会での信用を高めておかないと生き残れません。何より、ガバナンスが効いている、すなわち企業の管理体制が徹底していて、内部統制がしっかり取れていることが、取引上の会社の信用を上げ、ひいては利益を増幅させることになります。


Q6.コーポレートガバナンスの具体的あり方はどうなりますか。
A6.
 以下のような方法をとるケースが多いといわれています。

・社外取締役、社外監査役、委員会制度、執行役員制度の導入

・CEO(最高経営責任者)を外した取締役会を開催する

・社内行動規範や倫理規定を作成して、社内に周知する

・違法行為や背任行為を防ぐための仕組みを作成する

・内部通報の窓口を設置する


Q7.会社法における社外取締役の法規制はどうなっていますか。
A7.
 平成26年の会社法改正によって、社外取締役に関する規定が大幅に強化されることとなりました。社外取締役の要件が厳格化され、親会社の取締役、子会社や兄弟会社の一定の取締役、取締役の配偶者または二親等以内の親族等は社外取締役に選任出来ません(社外取締役の要件は会社法2条15号に定められています)。その趣旨は、独立性が不十分な者を排斥することにあります。
 また、令和元年12月の改正によって、社外取締役の設置が義務化されました。改正前は、社外取締役を置いていない会社はその理由の開示を求められていましたが(改正前会社法327条の2)、今回の改正で、有価証券報告書の提出義務のある監査役会設置会社(公開会社かつ大会社であるもの)は、社外取締役を置かなければならないとされました(改正後の同条。なお、施行は令和3年3月1日からとされています)。


Q8.コーポレートガバナンス運用上の課題はなんですか。
A8.
以下の問題点が指摘されています。
(1)社外取締役や社外監査役を務めるには、様々な専門知識や経験が必要ですが、それにふさわしい人の数が少ないと報道がなされているのが現実です。特に、女性や外国人の人材は少ない傾向にあります。
(2)企業は社内体制の構築にコストや時間的な負担感を持つことが多くなります。また、効果は定量的なものではないため、ガバナンスにどのくらいコストや労力をかけるべきなのかが悩みの種となります。
(3)コーポレートガバナンスは企業が遵守すべき原則であり、どのように運用するかは各社の裁量に任されています。このように一律のルールを各社がどのように解釈し展開していくのかも問題です。
(4)企業単体ではなくグループ会社におけるガバナンスは「グループガバナンス」と呼ばれ、近年議論に上がってきています。上場子会社や海外子会社についてはまだ制度が行き届いていない企業も多く、内部統制やガバナンスの欠如が不正につながる事例があり、共通の課題となっています。