会社間の株式の相互保有規制について

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Q1、株主総会において議決権を行使できない株式がありますか。

A1、
 株主は、その有する株式1株につき一個の議決権を有します。これを1株1議決権の原則と言います。その例外として、以下のような議決権を有しない株式があります。

 ①議決権を制限した種類株式
 ②自己株式
 ③相互保有株式
 ④単元未満株式
 ⑤自己株式取得に関する特別決議における売主たる株式

 
Q2、会社間の相互保有株式の議決権の制限ルールとは、どのような内容でしょうか。

A2、
 株式を2社間で相互保有すること自体に制限はありません(但し、後述の親子会社の制限はあります)。
 しかし、例えばA会社がB会社の4分の1以上の株式を保有している場合、B会社はA会社の株主総会において議決権を行使できないとする制限を設けています(会社法308条1項括弧書き)。

 
Q3、A会社の子会社CがB会社の株式を保有している場合は、どのように取り扱われるのですか。

A3、
 例えば、A会社がB会社の株式15%、A会社の子会社C会社が同じく10%を保有している場合、A会社とC会社を併せて25%(4分の1)を超えていますので、相互保有株式と評価され、A会社もC会社もB会社の株主総会において議決権を行使できません。


A4、議決権が制限された株式は、株主総会の定足数に算入されないのですか。

Q4、
 その通りです。

 定款に別段の定めのない限り、議決権制限株式は定足数からも除外されます。

 
Q5、そもそも相互保有株式の議決権を制限するルールは何故設けられたのですか。

A5、
 上の例で言うと、A会社がB会社の4分の1以上の株式を持っているとB会社をコントロールすることができる可能性が高くなります。そうすると、A会社の役員はB会社を通じて自社の株主総会をコントロールすることができ、「議決権行使の歪曲化」が生ずるからです。

 
Q6、A会社がB会社の株式の50%以上を保有している場合はどうですか。

A6、
 この場合、A会社とB会社は親子会社とみなされる可能性があります。子会社とは、親会社が子会社の議決権の過半数を有するか、親会社が子会社の経営を実質支配しているとして法務省令で定めるものをいいます。その場合、子会社は親会社の株式の取得が禁止されます(会社法135条)。その理由は、A会社がB会社に出資し、その出資金をもってB会社がA会社に出資したとすると、「資本の空洞化」が生ずるからです。

 会社法は、このようにして、親子会社規制(資本の空洞化防止)と議決権制限規制(議決権行使の歪曲化防止)で、株式相互保有の弊害を除去しようとしているのです。