建物賃貸借契約の解約申し入れと正当事由

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Q1、建物賃貸借契約において貸主からの解約申し入れはできますか。

A1、
 賃貸借期間の定めがあれば、期間内の解約申し入れが許される旨の条項がない限り、期中の解約は出来ません。期間の定めがあってもその期間が経過し、期間の定めがない状態となった場合、貸主からの解約申し入れは可能です。
 そして解約申し入れ日より6か月を経過すると契約は終了します(借地借家法第27条)。ただし、この解約申し入れには「正当事由」が必要とされていますので、注意が必要です。

 
Q2、「正当事由」とは具体的にはどのようなことを指しますか。

A2、
 借地借家法によれば、
  ①賃貸人、賃借人双方が建物の使用を必要とする事情
  ②賃貸借に関する従前の経過
  ③建物の利用状況
  ④建物の現況
  ⑤建物明渡しの条件または立退料の提供
 などを考慮すると例示されています(同法第28条)。


Q3、建物の老朽化は正当事由の一事情となりますか。

A3、
 正当事由は、実際は、賃貸人側の事情と賃借人側の事情を比較検討して決定されています。
 建物老朽化による建て替えの必要性、再開発による中高層ビルの建築などは、貸主側の正当事由の一つとして考慮されます。建物の老朽化が進み、建物の使用が危険な状態であれば、正当事由が肯定されやすいと言えます。しかし、実際はそこまで老朽化している事案はほとんどなく、老朽化のため大修繕を要するが、多額の費用が掛かるため建て替えた方が経済的であるという程度が多いと思います。その場合、建物の老朽化のみで正当事由が認められることはなく、他の正当事由の要素を検討する必要があります。

 
Q4、立退料(たちのきりょう)は正当事由を補完する事情となりますか。

A4、
 賃貸借契約の解約申し入れに伴う正当事由が不十分な場合、これを補強する方法として立退料名目の補償金を支払わせることが確定した裁判例となっていました。そこで、借地借家法も、建物明渡しの条件または立退料の提供を正当事由の一つとして規定しました。

 
Q5、立退料を算出する基準はなんですか。

A5、
 建物賃貸借では借家権価格と、営業補償が問題となります。

 借家権価格と言っても、借家権は借地権と異なり権利を第三者に売却することができないため相場価格というものはありません。これを求める方法は、差額賃料還元方式、借家権割合方式、収益価格控除法、取引事例比較法等があります。
 賃料差額還元方式は、正常実質賃料相当額(といっても移転先の建物賃料を参考に)が現在の賃料よりも高い場合に、一定の期間(通常は数年程度)その差額を補償する方式です。

 また、借家権割合方式は、借地権価格(通常は更地価格の60~70%)に借家権割合(通常は30%)を掛ける方式で更地価格の18%~21%を考えるというものです。
 ただし、いずれも借家の目的、契約の形式、登記の有無、転借か否かなどを総合的に勘案すべきとされていますので、借家権価格が極めて低額になる場合もあり得るのです。

 他方、営業補償はこれを的確に評価することは困難ですが、投下資本の回収としての営業用造作の買い取り、顧客の喪失等の損失補填が考えられます。

 
Q6、どのような手続をすればよいですか。

A6、
 まずは賃貸人側から賃借人に対し、書面によって解約の申し入れを行い、話し合いの機会を作るのが通常です。
 その後、移転先を紹介する、立退料を提示するなどの丁寧な案内をするのが良いと思われます。話し合いの中で賃借人の希望を聞き、立ち退きまでの期間を少し猶予するのもよいでしょう。

 その上で、どうしても話し合いがまとまらない場合、調停申し立て又は訴訟提起となります。