Q1、交通事故による受傷について、自動車保険ではなく、自分の医療保険(国民健康保険、健康保険等。以下、同じ。)を使うことが出来ますか。
A1、
よく病院では、交通事故のように加害者から受けた怪我の治療について、本来加害者の自動車保険が使えるから患者の医療保険は使えない、などと誤った案内がなされることがあります。しかし、第三者による受傷についても、医療保険各法(健康保険法、国民健康保険法など)では、特に保険給付をしないという規定はないので、医療保険を使うことが出来ます。
第三者の行為による事故について保険給付をしたときは、保険者が被害者本人の第三者に対して有する損害賠償請求権を代位取得します(健康保険法第57条1項)。そのため、医療保険で治療を受けた場合、患者は保険者に対して「第三者行為による傷病届」を提出することになります。この手続きが適切に行われることにより、保険者は加害者に対すし、負担した医療費を求償することが出来るのです。
Q2、喧嘩による傷病の場合はどうでしょうか。
A2、
喧嘩による傷病の場合も、基本的には交通事故の場合と同様に考えることができます。
ただし、喧嘩で被保険者自ら保険の給付事由を作ったと評価される場合は保険給付が制限される場合があるので注意が必要です(健康保険法第117条)。
Q3、当初は自動車保険で治療費の支払いをしていましたが、保険会社が支払いを打ち切り、自分の医療保険を使いたいと申し出ても、病院がこれを拒むことがたまにありますが、この場合はどうでしょうか。
A3、
この場合でも事情は同じです。医療保険法に基づき、患者は病院に健康保険証を示して医療保険を使うことが出来ます。病院が拒否した場合、厚生労働省、医師会から指導してもらうことも可能です。
Q4、勤務中の傷病について、医療保険を使うことは出来ますか。
A4、
「職域保険」(会社員や公務員が加入する医療保険)は、雇用を前提としており、保険給付の対象を業務災害以外の疾病、負傷もしくは死亡または出産としています(健康保険法第1条)。従って、勤務中(通勤中も同様)の傷病は、労災保険の給付を受けるべきとして、職域保険の利用はできません。
Q5、請負業務やインターンシップなどの場合は、労災保険が適用されないことがありますが、その救済はどうなりますか。
A5、
平成25年5月24日、健康保険法等の一部を改正する法律が成立し、請負業務やインターンシップなど、労災保険と健康保険のどちらの給付も受けられない者を保護するため、労災保険の給付が受けられない場合に健康保険の対象とすることが出来るようになりました。